冬季限定|葉ニンニクと豚バラ肉の四川風回鍋肉
Hui Guo Rou|Szechuan style Twice Cooked Pork belly and Green garlic
葉ニンニクと豚バラ肉の四川風回鍋肉
中華のレシピに時々出てくる葉ニンニク。
根元の結球が大きくなる前に収穫する葉っぱ付きの早採りニンニク。
ニンニクより香りが穏やかで、長ネギのように重なった葉は
ニンニクの芽と違ったシャクシャクとした食感。
使い方はニラと同じなので扱いやすい。
ただ、国内で出回る時期は12月半ばから3月末と冬の間だけ。
しかも、スーパーではほとんど目にしない。
だから、お店で見かけたら迷わず買うことにしているのです。
葉ニンニクが手に入って、家で作るのは定番の回鍋肉に、
麻婆豆腐、餃子、キノコと厚揚げの卵炒め。
一番人気は回鍋肉。
甘さ控えめで青唐辛子の香りと風味、穏やかな香りの葉ニンニク。
柔らかく蒸し煮して脂を落とした後、表面に軽く焼き色を付けた
豚バラ肉の芳ばしい香りと旨味。それに数種類の調味料が加わり
後を引く美味しさの正統派ごはん泥棒。
腹ペコさん、おかわり必須の安定の旨さ。
一回の回鍋肉に葉ニンニクを二束ほど、たっぷりと使う。
普段ニンニクに弱い私だけど、結球が小さめな葉ニンニクなら
多めに食べても平気なのが嬉しい。
そして鍋に残った旨味が溶け込んでるオレンジの香味オイルは、
餃子の具や麻婆豆腐作りや野菜炒めに流用。
自家製調味料のこぼれ梅と熟成酒粕で酒醸の代わりに
甘み・旨み・ほのかな酸味を加える。
酒醸チューニャンは、餅米・米麹又は根霉菌/クモノスカビを付けて
一週間ほどで糖化させた白酒に近いもの。
こぼれ梅の元の伝統製法みりんは、餅米・米麹・米焼酎で
半年ほど糖化させたもの。
こぼれ梅の方が癖がなく甘みに特化した味で、うちでは他の料理にも
使いやすい様にみりんを絞り切らずにゆるいペーストにしてるのです。
複雑な旨味の紅椒蝦黒豆チ醤は少量使いに。
回鍋肉らしさは郫県豆瓣醤ピーシェントウバンジャン+甜面醤を極少量で。
ペーストが多いと味は良いのだけど、見た目怪しいほど真っ黒になる。
なので足りない塩気は刻んだ黒豆の豆チで調整する。
だから、砂糖・塩は単独の調味料として使わないのです。
香味野菜と合せた伝統調味料。その濃厚な旨味ソースを
存分にまとった豚バラ肉と葉ニンニクの旨さを味わう。
材料さえ揃えば、誰が作っても失敗なし。
四川料理って歴史が古いだけあって、
旨さの基本構造が複雑で洗練された美味。
以前、豆瓣醤を粗挽き唐辛子・そら豆・米麹・塩で仕込んでみたのです。
唐辛子や岩塩は四川のが手に入らなかったから←普通の中国産唐辛子の5倍高値
家にあるタイ産+韓国産+ナイジェリア産のドライチリをミックスして
旨味・辛味・甘み・香りを補う。四川の塩井と言う地下塩水汲上して乾燥の
井塩セイエンと同様に作られたラオスの岩塩を加えた。←たまたま安価で入手
麹を減らしてそら豆の配合を多くして、塩をきかせてみたり。
蒸したそら豆に麹菌を付けて豆麹にしてみたり。
旨みのあるそら豆のさやを圧力鍋で柔らかくして
ペースト部分を加えてみたり。←味の深みが増したけど手間もかかる
夏冬の寒暖の差のある場所に3年、4年と長期熟成したり。
結果として、どれも自家製としてはかなり旨味はあるけど、
郫県豆瓣醤とは味の方向が全然違うものが出来上がった。
そして決定的な何かが足りない感。
四川の食材であるそら豆、日本と違う菌、唐辛子、夏の厳しい暑さや湿度。
郫県豆瓣醤だけでもあらゆるメーカーで味が違うし、そら豆+塩だけとか
ゴマ油入りとか材料も違うみたい。
材料以外の創意工夫・長年のコツも味に大きく影響してるんだと思う。
日本で手に入る豆板醤として売り出されてるものは裏書きを見ると
みそ、そら豆粉、砂糖、調味料(アミノ酸等)、にんにく、
大豆油、増粘剤(加工デンプン)と、色々なものが添加されてる。
旨くなりそうなものをアレコレと加えても味が濁るだけで
美味しさへとは繋がらず、むしろ邪魔となる場合も。
特に回鍋肉は豚肉と葉ニンニクと香味野菜だけのシンプル食材。
そこへ伝統調味料をバランス良く配合した料理。
豆瓣醤+酒醸でも、永川豆チ+甜面醤でも味は成り立つ。
全部加えるのも、それぞれの掛け合わせも足し引きも有り。
回鍋肉は誰が作っても失敗は無いけど、
自分が目指す旨さを形作る組み立てのバランスは案外難しいのだ。
だから、手に入る中で一番美味しいと思うものを選びたい。
郫県豆瓣醤はシンプルな唐辛子、そら豆、食塩、小麦粉
が原材料のものを。それが「美味しい」への一番の近道。
皮付きの豚バラ肉ブロック+薄切りショウガを深めの受け皿に入れ、
蒸し網の下に水を張った圧力鍋で(普通の蒸し器なら2~3時間ほど)
程良く噛みごたえが残る柔らかさまで蒸し茹でする。←うちでは15分
▼
粗熱が取れたら、バラ肉ブロックとスープを分けて
薄切りしやすいように冷蔵庫で3時間ほど冷やす。
調理開始|
バラ肉を食べやすいサイズに切り、熱したフライパンで
両面に軽く色付く程度に焼き、肉を一旦皿に取る。
▼
フライパンに残った脂をそのまま使い、みじん切りした香味野菜
(白ネギ+ショウガ+ニンニク)を炒めて香りを出す。
*脂が足りなければ冷やしてあるスープ表面の白く固まった脂を足す。
▼
大きめに刻んだ青唐辛子を加えて炒め、調味料を加える。
調味料:郫県豆瓣醤ピーシェントウバンジャン+こぼれ梅+熟成酒粕・少々+
紹興酒+沈殿辣油(辣油粉)+黒豆豆チ+紅椒蝦黒豆チ醤・少々+甜面醤・少々
(*太字は自家製調味料)
▼
焦がさないよう炒めて赤い油が滲んだら、豚バラ肉スライスを加える。
食べやすいサイズに切った葉ニンニクの茎部分を先に加え、
肉の脂が溶け出してきたら、残りの葉ニンニクを加えてサッと火を通して出来上がり。
酒酿の素菌:酒曲 Jiuqu|Liquor starter、Rice Leaven
「え、じゃあ そのクモノスカビ?それ使って豆瓣醤でも
豆チでもチューニャンだっけ、そういうの何でも作ればいいじゃん」
と、大胆な意見の腹ペコさん。そりゃ無茶ぶりってもの。
酒酿は簡単なの。根霉菌・クモノスカビの
リゾープス オリゼー Rhizopus. oryzaeで「素菌」が売られてるから。
Rice Leaven、酒曲 Jiuqu、Liquor starterで調べると使い方も出て来る。
インドネシアの大豆発酵食品用のテンペ菌として知られる
リゾープス オリゴスポラス Rhizopus oligosporus
とは同じリゾープスで近しい間柄。
35℃以下を保ち26℃ー30℃が管理しやすい。
2日ほどで菌糸が米粒や豆を覆うらしい。うん、醸し方も似てるかも。
テンペや酒酿みたいに単独の菌だけ使って短期間なら出来そうだけど。
「だって、それ使って作れば旨いんでしょ?」
まあね。作ってみたい好奇心はあるけど、そう簡単じゃないのだ。
永川の豆チは毛黴型豆豉 Mucor-Type Douchiって呼ばれてて
ケカビのムコール ラセモサス Mucor racemosus
を主体に数種類だって。シンプルな豆チでも手順が複雑。
豆瓣醤の元祖って言われてる古い豆チの作り方は
吸水して蒸した豆を竹ザルに入れてザルに住み着いてる菌を
利用してたみたいよ。ちょっとドキドキする仕込みだよねえ。
そんな訳で豆瓣醤もいろんな菌を使ってそうなのよね。
そら豆を発芽させてから使うとか、工程も多いし熟成期間も長い。
詳しい作り方、なかなか見つからないんだ。
日本の豆味噌とは作り方が全然違うの。
日本は昔から麹屋とかあって種麹を培養して使う習慣だけど、
他の国はそんなの無くて自然にカビ・酵母が付くのを待ってた。
それを発酵させることが多かったから菌単体じゃなくて
数種類含む形態なんだって。だから管理も難しい。
一般人の興味の範疇超えてて、完全にプロの仕事だよね。
日常で使うなら、材料費も含めて豆瓣醤買った方が断然安いって話。
▼でも、通販で酒曲(根霉菌)を買えるとこ見つけた。8g入り小袋が120円だって。
うちはもう保存ビンいっぱいだからなあ。
腹ペコさん、自分で酒醸作りなよー。
「そこまでしなくても今のままで十分旨いからいいです」
えー。ナニそれ
「でさ、チューニャンってご当地キャラで居そうだよねー」
どこまでも自由だな、腹ペコさんは…。
*参照:
▼いつも使ってるのはコレ。1kg入りだけど余ったらmadhuが引き受けます(笑)
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